渡邊邸物語

vol.1 1本の電話

2007年7月 早朝、
東署から電話。
「・・さんですか?こちらは警察です」・・・・
「お宅の実家に泥棒が入りましたので至急来て下さい」・・
すべてはここから始まりました。
梅雨時の雨が続いた日の朝の事でした。言うまでもなく私はドキドキしてとにかく現場に行くしかなくちょうどまだ地元にいた息子のワイフと孫と駆けつけました。
実母にはショックが大きすぎると判断しての事でした。
実家に着くと土塀の周りは警察に取り囲まれてまさにたった今、泥棒を取り逃がしたって状況でした。
何故なら取り損なった物が田んぼにまだ落ちていました。
蔵に穴が開けられてそこから入ったのです。
隣の方がそれに気付いて通報してくれたのです。
「渡邊」は8年程、息子が住んでいて新婚生活もした場所です。
独身の頃は番犬もいて子供たちに勉強を教えていたので毎日人の出入りも多かったので
何の心配もなくはっきり言って鍵をしないでも全然大丈夫でした。
息子夫婦に赤ちゃん誕生と共に市内でマンション住まいをしてほんのわずかの間に泥棒は眼を付けていたのでしょう。

見事にやられていました。

そう言えば雑草は生えっぱなし、大きな木々は伸び放題。
家の中には畳のヘリから竹が出ていました。
現実を知った母はいったい何が盗られたか定かでなく途方に暮れる日々でした。
母は「あーーー夢も希望もなくなった・・・」と嘆き悲しみました。
多くの茶人が集まって華やかだった茶室もただのボロヤになって私の重荷になるのかと途方にくれました。
警察の事情聴取の後で母と食事をした時に何とかここでまたお茶会ができるようにしょう・・・って母を慰める事だけを思って言ってしまいました。それは無茶な事とわかっていました。本当に手がつけられない状態にまでなっていました。
一カ月が過ぎた頃に久々に会った友人に「元気がないけどどうしたの?」の言葉にやっとこの泥棒騒ぎの一部始終を話しました。その友人が「それならそこに連れてって」と言われで向かいました。
残念ながら鍵がなく外から見てもらいました。
「ここは凄いから掃除して人に見せたらいいよ」・・・・・。
この日も雨の日で私の気持ちは「そうかな〜」程度でした。

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